日本手話学会2014年度第3回手話学セミナー(2014年9月28日)

発表要旨

認知言語学は人間の認知能力に基づいて言語現象を説明します。その中でも特に重要な説明概念として「身体性」があります。この「身体性」という概念は、手話言語の文法記述にとってはとりわけ有用であろうと思われます。なぜなら、手話言語はその媒体として、まさに「話者の身体」そのものを用いており、その「身体」が「手指動作」や「空間」と対峙することによって何らかの「意味」を担っているからです。従来の手話言語の研究においては、「空間」の重要性はたびたび強調されていますが、それに比べると、その「空間」に対峙するものとしての「身体」の重要性は必ずしも理解されているとは言いがたい面があります。当日は、手話言語が媒体として「身体」を用いることが、事象構造の言語化にどのような影響を及ぼしているか、音声言語(特に日本語や英語)と比較しながら考えてみたいと思います。取り上げる項目は、再帰構文、受動構文、与格主語構文、使役構文、結果構文、知覚構文、繋辞的知覚構文、中間構文などです。それらの文法現象の背後にある「身体性」について論じることによって、認知言語学的なアプローチの有効性を示したいと思います。

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